小松耕輔の音声テープ
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晩年の小松耕輔が語った講話やインタビューを録音したテープが、由利本荘市東由利の現小松家当主・小松義典氏宅で見つかった。旧式のオープンリールのテープで、両親が暮らした古い母屋の棚の中に、大事に仕舞われていた。耕輔の肉声を伝える貴重な史料といえ、義典氏が会長を務める小松耕輔音楽兄弟顕彰会は、音声データを耕輔の母校の東京藝術大学・音楽学部大学史史料室へ提供した。
録音時間は約2時間。うち、小松耕輔の音声が登場するのは3回で、計70分ほど。1回目は講話で、耕輔75歳の1960年(昭和35)と推定される。広子夫人を亡くした2年後に当たり、録音時間は38分31秒。子供時代の音楽環境や社会音楽振興への取り組みなどを語っている。
2回目はインタビュー形式。芸術における音楽の位置付けや音楽教育の在り方を19分間にわたって答えた。聞き手が秋田方言の男性であることから、由利本荘市内で録音された可能性が高い。3回目は12分。明治時代に流行した明みん清しん楽がくを懐かしそうに振り返っている。
声の張りがあって若々しい。音楽教育の黎明期を、自身の来し方を重ね合わせながら語るなど、実直で飾らない人柄が偲ばれて、興味深い。
由利本荘市東由利中学校に旧玉米中学校時代の学校日誌が残されており、1960年7月15日(金)に「小松耕輔先生来校講話す」と記されている。当時の写真も残っていて、1回目と3回目の講話のどちらか一方は、その時の録音とみられる。